ArcGIS 2022 リリース以降、ArcGIS Server の今後のバージョンでは、ArcMap サービス ランタイムのサポートがなくなります。 新しく公開されたサービスとアップグレードされたサーバー サイトの既存のサービスでは、ArcGIS Pro サービス ランタイムを使用するサービスだけがサポートされる予定です。
ArcGIS 2022 以降のリリースにアップグレードする前に、ArcMap サービス ランタイムを使用するすべてのサービスを移行、再公開、または削除することをお勧めします。 ArcGIS Enterprise 10.9 には、今後の変更に対応するためのオプションが複数用意されています。
新しいコマンド ライン ユーティリティ UpdateArcMapServices を使用すると、GIS サービスをまとめて移行する処理を自動化することができます。 このユーティリティには 2 つのモードがあり、analysis モードでは、サイト内で ArcGIS Pro サービス ランタイムに移行できる状態にあるサービスを判別することができます。 また、execution モードでは、対象となっているすべてのサービスを一度にまとめて移行することができます。 サービス ランタイムを移行しても、使用しているサービスの内容と設定に影響はありません。
サービス ランタイムを移行するための前提条件
UpdateArcMapServices ユーティリティを使用すると、次のタイプのサービスを移行することができます。
- マップ サービス
- フィーチャ サービス
- イメージ サービス
- WMS サービス
- WCS サービス
- WFS サービス
- ネットワーク解析サービス
メモ:
ホスト サービスは移行することができません。
このユーティリティを使用すると、ArcGIS Server Manager の [ランタイムの編集] 操作を実行した場合よりも多くのサービス タイプを移行することができますが、ArcGIS Pro サービス ランタイムに移行できるサービスにはまだ制限があります。 このユーティリティを解析モードで実行した場合は、結果ウィンドウで、対象外とする理由に基づいて対象外となっているサービスが分類されます。
- コード 10900 で示されたマップ サービスには、互換性のないサービス機能が含まれています。 マップ サービスを移行の対象にするには、そのマップ サービスでスケマティック ケーパビリティまたはカスタム SOE/SOI を無効にする必要があります。
- コード 10901 で示されたマップ サービスには、互換性のないレイヤー タイプが含まれています。 ラスター カタログ レイヤーと Tracking Analyst エクステンションで作成された時間対応のレイヤーは移行することができません。
ArcMap から公開されたサービスだけが解析されます (最初に ArcGIS Pro から公開されたサービスは ArcMap サービス ランタイムに移行することができません)。
サービス インスタンス
ArcGIS Pro サービス ランタイムは、マップ サービス向けの専用インスタンス タイプと共有インスタンス タイプの両方をサポートしています。 このため、このユーティリティを実行すると、移行処理中に、移行対象の各マップ サービスにインスタンス タイプが割り当てられます。 これは、ArcGIS Server サイトのデフォルトのインスタンス タイプ設定に基づいて行われます。
サービスを移行する前に、移行後の考えられる状況を必ず検討してください。 たとえば、ArcGIS Server サイトのデフォルトのインスタンス タイプが共有インスタンスであり、通信量の多いサービスを移行する準備をしている場合は、移行後に専用インスタンスを使用するようにサービスを編集して、そのサービスに適したリソースを確保することを検討します。
コマンド ライン ユーティリティにアクセス
移行ユーティリティは、ArcGIS Server コンピューター上の <ArcGIS Server installation location>\tools\UpdateArcMapServices フォルダーでホストされます。 UpdateArcMapServices.bat ファイルは、この場所から直接実行することも、ディレクトリのフル パスを参照して実行することもできます。
UpdateArcMapServices ユーティリティをどちらのモードで実行しても、HTML ページが開き、このツールの実行結果が表示されます。 どちらのモードでも、現時点で移行の対象となっているサービスの数または移行の対象外となっているサービスの数が表示されます。 execution モードでは、移行処理に関連するログが表示されるだけでなく、ArcGIS Pro サービス ランタイムに正常に移行されたサービスの数も表示されます。
パラメーター
このユーティリティは、次の入力パラメーターをサポートしています。
パラメーター | 説明 |
---|---|
-m、--mode | このツールを実行するモードを指定します。analysis モード (デフォルト) では、現時点で移行の対象となっているサービスと移行の対象外となっているサービスが判別されて表示され、execution モードでは、対象となっているすべてのサービスが ArcGIS Pro サービス ランタイムにまとめて移行されます。 |
-o、--output | このツールのレポート ファイルが生成されるディレクトリを定義します。 定義しないと、このツールのレポートが一時ディレクトリに生成されます。 |
-u、--username | サイトの主サイト管理者 (PSA) アカウントが利用できない場合は、サーバー管理者のアカウントのユーザー名を指定するか、(サーバーがフェデレートされている場合には) ポータル管理者のアカウントのユーザー名を指定します。 |
-h、--help | ユーティリティのヘルプを出力します。 |
使用例
GIS 管理者は、組織のすべてのサービスで ArcGIS Pro サービス ランタイムを使用したいと考えています。 管理者は、次のコマンドを使用して、コマンド ラインを開き、このツールのディレクトリにアクセスします。
cd <ArcGIS Server installation location>\arcgis\server\tools\UpdateArcMapServices
はじめに、対象となっているサービスと対象外となっているサービスのリストを取得するために、管理者はこのツールを解析モードで実行します。 このリストを同僚と共有したいので、管理者は別の出力位置を指定します。
UpdateArcMapServices.bat -m analysis -o C:\\Desktop
このツールを実行した結果、ArcGIS Server サイト内のサービスのうち、現時点で移行の対象外となっているサービスが 5 つあることが判明しました。 GIS スタッフは、これらのサービスから互換性のないエレメントを削除する作業に取り掛かります。 サービスを移行の対象にすることができない場合は、そのサービスをArcGIS Pro で再作成してから再公開します。
サイトの準備が整ったら、次に管理者はこのツールを実行モードで実行します。
UpdateArcMapServices.bat -m execution
このツールの実行中に、管理者は HTML 結果ページを監視して、各移行タスクのログを表示します。 このツールの実行が終了すると、対象となっている各サービスが ArcGIS Pro サービス ランタイムに正常に移行されています。